コンテンツ評論 テレビ番組評

「足尾から来た女」をみた

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サチは県の役人として村を壊す兄に詰め寄る

NHKで前後編2回で放送されたドラマ。
足尾鉱毒事件を背景とし、足尾銅山の鉱毒で絶滅の危機に瀕した谷中村出身の無学な一女性、新田サチを主人公として描く。尾野真千子主演。
鉱毒に汚染され、国にも見捨てられた谷中村は、福島原発事故によって放棄された地域のアナロジーにも見える。
足尾鉱毒事件に一生をかけて取り組んだ田中正造を柄本明が演じているが、そのセリフ「都を作ったのは町なんだ。町を作ったのは村なんだ。百軒の家も一軒の家から始まったんだ。その一軒を殺す都は、己の首を締めるようなものだ。そんなことをする野蛮国は必ず滅びる」というのが、このドラマに込められたメッセージだろう。
明治維新は、地方の集合体だった幕藩体制を否定して中央集権を敷いたが、そこから始まった地方の軽視が日本の病巣となり今や日本を空洞化させている。ドラマの舞台は明治末期。それが明確化してきた時代だ。日露戦争を戦うために銅を必要とした政府は、銅山を取って村を捨てた。
前編は非常に重厚なドラマとして鑑賞できた。鉱毒事件に人生を翻弄されるサチを中心に、政府と戦おうとする田中正造や、少数者の声が届く政府を目指そうとする福田英子(鈴木保奈美)など社会主義者たち、それを監視する警察、政府の側につくサチの兄新吉(岡田義徳)など、さまざまな立場の人間が見事に配置されていた。
しかし、後編に入ると、石川啄木が登場し、サチの恋心が主題になる。どうも前編とは水と油のようで、文字を学ぼうとするサチのモチベーションになってはいるものの、このエピソードはない方がよかったと思う。
内容を整理し、全体を1時間半程度のドラマにまとめたほうが感動的な作品になったのではないだろうか。尾野真千子の好演が光っているだけに、惜しい。

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