コンテンツ評論 テレビ番組評

「おら #あまちゃん の太巻を語る~その1」

太巻はアイドルを目指すヒロインアキの前に立ちふさがる

太巻はアイドルを目指すアキの前に立ちふさがる

あまちゃんメモリーズ 文藝春秋×PLANETSという本を読んだ。
実に丁寧に「あまちゃん」について解説された本で、さまざまな論者が多方面からこのドラマを論じている。
今月末に出版されるシナリオ本を入手するまで、「あまちゃん」については書くまいと思っていたが、ついつい私も書きたくなってしまった。

で、最初に書こうとするのは、太巻こと荒巻太一についての論考である。
なんで、そんな悪役キャラについて論じるのか、といえば、他にも天野春子論とか足立ユイ論など書きたいことはあるのだが、考えが一番まとまっているのが太巻についてだから。

太巻といえば、主人公天野アキの母春子を鈴鹿ひろ美のゴーストシンガーにしたことで、結果的に彼女のアイドルデビューを阻害したばかりか、自分の傘下タレントになったアキのデビューも妨害しようとしたということで「あまちゃん」唯一の悪役キャラということになっている。
普通に考えて、母親をアイドルにできなかった分、その娘のデビューを後押ししてやろうと思うであろうに、なぜ? ということは放送当時Twitterに飛び交っていた感想だった。

その後、太巻は改心し、春子と鈴鹿に向かって過去のことを詫びることによって、むしろアキたちにはバックアップの側に回るのだが、だからといってそれ以前の行動について、完全に説明されてはいない。ここでは、あくまで私の想像力によって、「語られなかった、あまちゃん物語」を補ってみることにしたい。

■太巻の経営手腕はどうなのか?

太巻といえばダンサー出身で、「振り先(振り付けから先に考える)」という独特の手法を持った音楽プロデューサーであり、上野・アメ横に東京EDOシアターという常設劇場を運営し、「アメ横女学園芸能コース(アメ女)」という人気アイドルグループを所属させている芸能事務所でもある、株式会社オフィスハートフルの社長である。
では、経営者としての彼の手腕はどうなのだろうか?

多くの場合、クリエーターとしての手腕と、経営手腕は同一人物に宿らないが、ここでも太巻はクリエーターとして辣腕である分、経営者としては落第であるように思う。

その証拠は、第84話に見られる。東京EDOシアターで太巻に挨拶したアキが「お母さんがよろしくと言ってました」と付け加え、母春子の名前を太巻に告げた。その時の太巻の動揺ぶりがすごい。驚愕のあまり、手が震え、退出のため名札をひっくり返す動作がままならないのである。動揺ばかりか、いくばくかの怒りが混じっているようにも見える。

このシーンが放映された後、Twitterでは疑問が爆発した。「だって、契約書見ただろ!?」
そのとおり、第71話で天野アキとオフィスハートフルは契約書を交わし、そこには親権者として天野春子の名前が記載されたことを、画面はバッチリ映し出しているのである。

ということは、社長である太巻は契約書を見ていなかった、ということになる。芸能事務所にとってタレントは大事な商品だ。その商品にかかわる契約書の確認をおろそかにする、ということは太巻の経営態度も非常に疑わしい。経営者というより、プロデューサーとしての活動に力を注いでいるのだと考えられる。

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