コンテンツ評論 テレビ番組評

#あまちゃん 少年としての天野アキ

「南部ダイバー」にどん引きするアキ(あまちゃん第29話)

「南部ダイバー」にどん引きするアキ(あまちゃん第29話)

あまちゃんのヒロイン天野アキについて考えてみる。

普段のアキのビジュアルを見ると、とにかく女の子らしい雰囲気には乏しい。
私服の服装も、すべてズボンだし、それも身体の線を出さないブカブカのものばかりである。髪をショートカットにしているから、一見少女というよりは少年のように見える。

そして、話す言葉は袖ヶ浜の海女ことば。一人称は「おら…」である。

アキの祖母である夏ばっぱを見てもわかるように、海女は自然を相手にする漁師である。そして、漁家の主婦でもあるが、同時に夫を遠洋漁業に送り出し、実質的に家長である。そういう環境の中で、海女の言葉は男言葉に非常に近いのだ。

これが町の女性となると、訛っても絶対に「おら」とは言わない。一人称は「わだす」である。あまちゃんにはあまり登場しないが、観光協会職員の栗原しおりなどがそれに当たるだろう。

アキが訛りを獲得するにあたって、この「おら」という一人称が大きく影響を及ぼしていると思う。アキは半分少女、半分少年のような両性具有に近い心を持っている。

ふたりの家出はまるで駆け落ち(第67話)

ふたりの家出はまるで駆け落ち(第67話)

親友足立ユイとの関係をみても、アキは心の中の少年の部分でユイに恋をしているような描写が、親しくなるきっかけの部分にある。(第11話) 東京に向けて二人で家出を敢行するシーンは、男女の道行きのようにしか見えなかった。(第67話)

恋人ということになっている種市との関係を見ても、北三陸高校潜水土木科の先輩後輩としての関係がいつまでも尾を引いている。お座敷列車から旅立つ種市を見送るシーン(第53話)、東京で再会するシーン(第79話)などみても、まるで男性同士の先輩後輩のようなイメージがつきまとう。特に「南部ダイバー」を歌うことで、ふたりの関係は先輩後輩にリセットされるようである。

クドカン(脚本家宮藤官九郎)は、「アキは一種自分の分身なので」と言っている。そういう意味でも、アキには男の部分がある。

アキの造形でいつも感心するのは、髪型である。ショートカットなのだが、左右のサイドを長くし、耳や頬の半分を隠している。前髪も眉まで隠す長さだ。これは、顔の中から表情を切り取って額縁に入れたような効果がある。
能年玲奈の豊富な表情を際立たせるための、ヘアメイクなりの演出だと思う。この額縁の中なら、少年っぽい表情も、少女らしい表情も自由自在に作り出せるからだ。

そして、海女の鉢巻きをしたり、アイドル衣装を着て髪型を変えると、一気に可愛らしさが爆発するのである。この髪型こそが、天野アキなのだと思う。

 

 

-コンテンツ評論, テレビ番組評
-, , , ,