「まねきTV」最高裁判決がまねく未来
昨夕はこの判決の話で持ちきりだった。
時事ドットコム「番組のネット転送は「違法」=著作権侵害認める-テレビ局実質勝訴・最高裁」
テレビ番組をインターネットで国内外に転送するサービスが著作権法に違反するかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は18日、転送業者による著作権侵害を認めた。その上で、サービスを適法とした二審判決を破棄、審理を知財高裁に差し戻した。
訴えたテレビ局側の実質的な勝訴判決で、差し戻し審では損害賠償額などが算定される。転送サービスをめぐるこれまでの地裁、高裁判決では、判断が分かれていた。
この裁判がどのようなものかを知りたい方には、小寺信良氏が2007年に書いた『テレビ局を震撼させた「まねきTV裁判」の中身』(ITmedia)を読んでいただこう。
今回、最高裁が実質テレビ局の訴えを認める判決を下したことによって、さまざまな影響が考えられる。
小寺氏はこの判決直後、まねきTV側の弁護士を迎えて、Ustream放送を行って、判決について聞いている。
PRONEWS「まねきTV最終判決が導くものは?-明日のTVを考える-」
この判決の意味について知りたい方は、録画放送が視聴できるので、いちどご覧になることをおすすめする。
弁護士は、この判決の問題点として、①1対1の送信を行う装置が、自動公衆送信装置とみなされてしまったこと、②送信の主体が装置の設置を行った者である、とみなされてしまったこと、を最後に判決の問題点として指摘した。
もとNHKで経済学者の池田信夫氏は、
アゴラ『まねきTV事件にみる「司法の逆噴射」 』
「単一の機器宛てに送信する場合でも、当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるときは自動公衆送信装置に当たる」という最高裁の基準が今後も適用されると、インターネットのルータもハブも携帯のリピーターも「自動公衆送信装置」として規制の対象になり、ホスティングやハウジングなどクラウド型のサービスがすべて違法とされるおそれがあります。
と指摘している。
これについての問題点は、おそらく今後もネットのあちこちでたくさん指摘され続けることと思う。そして、テレビ上では(おそらく新聞上でも)無視され続けるだろう。
「テレビ局自身が、これによって将来ネットで展開できるはずのビジネスの可能性を消し、自らの首を絞めた」という指摘がすでに多く聞かれる。
勝海舟がアメリカから帰国後、老中に「かの国では、およそ人の上に立つ者は皆、その地位相応に怜悧でございます。この点ばかりはわが国とは反対かと思われまする」と言ったという話があるが、150年経っても同じかと言いたくなる。
最高裁の判事たちは、法律論に関しては最高の専門家なのだろうが、テレビやコンテンツに関する見識はないに等しい。
また、訴訟を続けたテレビ局側の経営陣も「将来のテレビとはどうあるべきか」というビジョンはまったく持っていないだろう。ただ、現在の既得権を手放さないことしか考えていない。
要するにテレビ局は自分たちのコンテンツを囲い込みにかかったわけだ。そのことで、おそらく優良なコンテンツが今後テレビ局をスルーして行くとは、考えもせずに。
船が沈みそうなら、乗員乗客をとにかく近くの島に上陸させることを考えるべきなのに、この船長は入ってくる水をかい出しながら航海を続けようとしているみたいだ。
引用が多くて長くなった。このことの影響については、また考えてみることにしたい。