映像文化を語ってみる

どうしてメーカー主導なんだろう

2010/12/20

このブログを読んでいただいた雑誌のライターの方から、右下のメールフォームを使って依頼があった。

今度、雑誌でパナソニックのHDC-SD1というカメラを特集するので、アドバイザーとして電話でコメントをほしい、という。決して広告ではなく、編集企画だという。

私に与えられたテーマは「きれいに撮るにはどんな機能に注目すればよいのか」だというので、こんな返信をした。

20年以上映像制作に携わってきた経験で申しますと、
ご期待に添えるかどうかわかりませんが、「きれいに撮るにはどんな機能に注目すればよいのか」ではなくて「きれいに撮るにはカメラの機能に頼らないこと」という話になってしまうと思います。

たとえば、HDC-SD1には手ぶれ防止機能が搭載されている、とご紹介いただいたWebページにはありました。
しかし、どれほど手ぶれ防止機能が進化しても、片手撮りで手ぶれをしないカメラはありません。
むしろ、小型軽量なカメラほど手の先でカメラが動いてしまい手ぶれするという結果になりがちです。

素人の方に、より良い撮影をするには、というテーマでお話をするとしたら、できるだけ三脚を使いましょう、というでしょう。

カメラをできるだけ動かないように固定することは、撮影の基本なのです。
これを軽んじたがゆえに、こんな結果になった例があります。

もちろん、家庭内では三脚を用意するとしても、いつもいつも三脚を持って歩けとも言えないでしょう。
そういう時は、たとえばカメラのホールドの仕方を工夫してカメラを動かないようにする。
たとえば、右手だけでカメラを支えるのではなく、左手も添えることによって、三点で支えるかたちになってカメラが安定します。
両脇を締めて、肘を脇腹につけるようにすると、それだけで手ぶれはかなり防ぐことができるのです。

手ぶれ防止機能は、以上のような基本を守った上で、さらにどうしても防げない揺れを低減させる機能、と割り切ったほうが良い結果になります。

同様に「暗いシーンも美しく撮れる」とありますが(この機種がどれくらい低照度に強いか、知りませんが)きれいな映像を撮るには、光を当てることだと教えます。
夜間の室内であれば、室内灯をつける。
夜間の戸外であれば、できるだけ街灯などの近くで撮るようにする。
そう考えた上で、どうしてもそうしたシチュエーションで撮影できない場面を撮るときには、この低照度対応が効力を発揮すると考えた方がよいでしょう。

よい映像を撮るための撮影とはそうしたものだと考えておりますので、「このカメラにはこんな機能がありますから、撮影の基本を守らなくても大丈夫ですよ」とは、口が裂けても言えません。

もし紙幅が許すならば、ぜひ「せっかくそのためのソフトが添付されているのですから、DVDを作って友人、親戚に見せるようにしましょう。そのためには簡単な編集を行なって、一番おいしい部分だけを抜き出してDVDを作るようにしましょう」というコメントを加えていただきたいと思います。

さらに言えば、YouTubeに代表されるような動画投稿・共有サイトにも触れていただけると、カメラの新しい使い道を提示したことになるかと思います。

さきほどライターの方から電話があった。
編集部とも相談したが、私の意図が記事に反映できそうもないので、今回はナシということで…、と丁寧なお断りの連絡だった。まあ、主婦向けの雑誌だということだからやむを得ない。

要するに、メーカーが用意した機能に対して「これはすごい。これでこんなことが出来る」というコメントが欲しかったのだろうなあ。

どうしてこの社会はメーカー主導でしか物事が進まないのだろうね。悲しいね。

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