コンテンツ評論 テレビ番組評

「陸王」をみた

TBSの日曜劇場では、もう何度も池井戸潤の作品をドラマ化してきた。「半沢直樹」にはじまり「ルーズヴェルトゲーム」「下町ロケット」など。

ある意味、中高年のサラリーマンでも熱狂できる弱者が強者に勝つストーリー。
勧善懲悪ではないが、善悪がハッキリしたわかりやすいサクセスストーリーだ。

この「陸王」も、地方の中小足袋製造業者がランニングシューズの開発に取組み、大手シューズメーカーと互角に渡り合うという、ある意味胸のすくストーリー。

だが、ビジネスドラマとしてみると、何となくモヤモヤしたものが漂ってくる。

まずは大手シューズメーカー「アトランティス」の描き方。明白な悪役として描かれているが、彼らとて自分の仕事に精を出しているだけ。普通のサラリーマンのはずだ。あんなにも悪役然とした描かれ方をするのは、ドラマとしての必然性はともかく、ビジネスマンとしては不本意だろう。

もうひとつ、ランニングシューズ陸王のソール部分に使われる「シルクレイ」という新素材の扱われ方。当初、開発者である飯山がビジネスに失敗したとしても、後からこの素材の良さがだんだんと社会に伝わってくる。この素材を一シューズ業者であるこはぜ屋が独占するのは、ビジネスとしてもよくない。銀行員で途中からベンチャーキャピタルに転職する坂本は、こはぜ屋からシルクレイの製造会社を独立させて、シューズ業界全体に製品供給することを提案すべきではなかったか?

全体として、このドラマは「中小業者が強者に勝つ」ドラマではあっても、「ものづくり」のドラマではなかった。「アトランティス」はじめ強者の側の弱者イジメなど、こはぜ屋の試練をどう乗り切るかという部分と、社長宮沢の葛藤が主に描かれ、肝心の陸王の開発についての苦労はアッサリとスルーされていた。

たとえば、ランニングシューズの実績のないこはぜ屋が、なぜ陸王のソールの接地面パターンをラクラクと開発できたのか? シューズメーカーなら血のにじむような努力をする場面なのだが、なぜかシルクレイを手に入れた次の場面では理想的なソールが完成していた。
足袋の縫製技術をシューズのアッパーに適用するところも、技術者としては簡単ではなかったはずなのだが、なぜかアッサリとクリア。

そのあたりが、ちょっと物づくりストーリーの上っ面をなでただけに感じたのは私だけではないだろうか?

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