コンテンツ評論 テレビ番組評

時代も暮らしも描かなかった「#とと姉ちゃん」

2016/10/02

とと姉ちゃん「とと姉ちゃん」もついに完結したわけだが。

「あなたの暮らし」という「暮らし」をテーマにした雑誌の編集部を舞台としながら、とうとう最後まで「人々の暮らし」を見つめる視線を持たずに終わってしまった。それだけではなく、その属している時代そのものも描かれていなかったと思う。

そのことを痛感させたのは、「あなたの暮らし」誌がはじめた「商品試験」で明確になる。

「商品試験(史実では商品テスト)」は家電製品をはじめとする世に出ている商品をテストして、その良い点悪い点を客観的に洗い出して評価する企画だ。

ドラマ上このくだりが登場するのは昭和20年代の末から昭和30年代。そもそものきっかけは、粗悪な国産の家電製品が横行したことにある。

我々の暮らしで使われる家電製品のほぼすべてが登場してきた時代だ。冷蔵庫、洗濯機、電気炊飯器など、ひとつ登場するたびに家事が楽になり生活が豊かになる。それはワクワクさせる時代だったのではないだろうか。だからまだまだ高価だったにもかかわらず消費者は家電製品を買い求めたのだ。しかし、このドラマの中ではそうした時代の空気は描かれない。

というか、そもそもドラマ内に消費者の視点が存在しない。次女の鞠子が結婚退職して専業主婦になるわけだが、こうした家電製品のひとつすら使っているシーンがない。洗濯機を買ったというシーンは存在するのだが、それを使って洗濯をしているシーンもなければ、それで家事が楽になったという描写もない。こうした家電製品が導入されたことで家事労働が軽減され、それが女性の社会進出につながっていくはずだ。常子が既婚女性社員の働きやすさを考えるシーンがあるのに、そこにもつながっていかない。

代わりに粗悪品を製造する家電メーカーの社長が悪役として配置されて、安易な対決構図が用意された。なのに、たいしたカタルシスもなく適当な幕切れで終わっている。

終盤は(モデルではなく)モチーフとなった「暮しの手帖」での出来事があるので、それでエピソードを作って並べただけのストーリーに終わっている。終盤は本当に息切れしているのか、およそ笑いも涙も感動もなしに終わってしまった。

毎朝少しずつ150回以上にわたって積み重ねていくのが朝ドラだ。本作では前半と後半は水と油のように別のテイストだし、周到な伏線もなくすべてのエピソードが唐突だった。常子という人物の描き方も中途半端。たいへん残念である。

実話ベースの朝ドラは、元となる史実があるからそれを元にすれば安易に書けないこともない。脚本家にそんな打算がなかっただろうか?
そもそも能力不足の脚本家を起用したという点で、本作におけるプロデュースは失敗だったと言えるのではないか。

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