コンテンツ評論 テレビ番組評

「#とと姉ちゃん」の勤め人時代

toto2このドラマもようやく折り返し地点を過ぎたところ。今日放送の回で小橋常子は勤めていた出版社甲東出版を辞め、みずから起業して「女の人たちの役に立つ雑誌」を創刊する意思を明らかにした。つまり、商事会社のタイピストから出版社勤務と変遷した常子の勤め人時代が終わった、というひとくくりだと思う。

この間に時代は第二次世界大戦を経過した。朝ドラでこの時代を扱うのは「マッサン」以来だから久しぶりだ。もっとも、戦時中描写は2週ほどあったが、あっさりしたもの。正直朝ドラであまり戦時中の辛さを描写したくなかったのだろう。

ところでこのドラマは薄味である。薄いというのは描写だ。はっきり言ってしまえば具体性に乏しい。

たとえば、商事会社を辞めさせられた常子は雑誌出版社に勤めることになった。しかし、甲東出版という社名は最初から明らかになっているものの、そこがどんな雑誌を作っている会社なのか、視聴者にはなかなか知らされない。回が進むにつれ、刷り上がった雑誌が画面に登場したことから「新世界」という雑誌名であることが視聴者に知れる。しかし、「新世界」がどんな雑誌であるのか、いっこうに台詞には乗ってこない。だいぶ経ってからどうやら文芸誌であるらしいことが語られ、連載小説なども掲載していることがわかる。だが、純文学なのか大衆文学なのか、どんな傾向の雑誌なのかは最後までわからない。

こういう具体性のない描写が続くとイライラしてくる。上っ面のストーリーだという気がするからだ。

話は変わるが同じように雑誌編集の世界を扱っていた「重版出来」というドラマは具体性に溢れていた。ストーリーの詳細は明かされないものの、ドラマの表面に出てくるディテールだけでもどんなマンガを描いているのか、よく伝わってきた。現役のマンガ家がドラマの小道具にすぎないマンガの制作協力をしていたこともある。

本作では、常子は「女の人たちの役に立つ雑誌」と口にするものの、それが何を扱った雑誌なのか、どのような編集方針なのか、ターゲットはどのような女性なのか、一切わからない。モデルとなっているのは「暮らしの手帖」なのだから、それを模してプレゼンさせればいいと思うのだが。

そういえば常子はこの出版社勤務を経て雑誌づくりのノウハウを身に付けたはずなのだが、具体的にどんな仕事をしていたのか全然見えないというのも残念だ。

戦時中を経過したこともあって、多くの登場人物がドラマの画面を通過していったが、消えていった人物の消息を語る台詞もほぼない。戦争が終わったら、昔親しくしていた人々について消息を知りたがるものではないだろうか?そういうこともあって作者の登場人物への愛が少ないという気もする。

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