コンテンツ評論 テレビ番組評

「#てっぱん」をみた

02_px250Netflixの無料体験期間中に見終わらなければと思って、集中してみたら止らなくなり、一気にみてしまった。

2010年の10月から2011年の3月にかけて放映された、BK(大阪局)制作の朝ドラ。尾道と大阪を舞台とした現代もので主演は瀧本美織。

尾道で鉄工所の娘として育った主人公村上あかりが、高校3年生の夏に実の祖母が訪ねてきたことにより自分が養子であったことを知る。高校卒業後祖母の住む大阪に行き、そこでさまざまな人々と触れあった末にお好み焼き屋を営むようになる、というストーリー。

朝ドラは基本的にホームドラマであることが多いが、この作品は徹底的に「家族」をテーマとしている。主人公あかりがお好み焼き屋をやるようになる動機もまた、尾道と大阪のふたつの家族をお好み焼きでつなぎたい、という思いからだ。

主人公村上あかりは、いわば純粋種の朝ドラヒロインといえる。明るく前向きで、適度に強情っぱりでお節介。周りの人全部が好きで、周りの人全部から愛される。時に朝ドラヒロインに感じる嫌味や臭みをまったく感じない。人を嫌うことも、人に嫌われることもなさそうな可憐なヒロインだ。

朝ドラヒロインのお節介は時に嫌みったらしさを感じさせることがあるが、あかりにそれを感じないのは、お節介の範囲が家族や、ほぼ家族同様のつきあいをしているレギュラー登場人物に限られているからだろうか。

大阪で暮らしてもいっこうに尾道弁が抜けないあかりは、演じる瀧本美織にとってほぼ等身大。

当時19歳の瀧本美織は同じ中国地方の鳥取出身。鳥取の高校を卒業するまでは、仕事のたびに上京していたという。東京在住経験のないまま、大阪に約1年常駐してこのドラマの撮影をこなした。つまり彼女自身が「田舎出身で都会で頑張る女の子」そのものだったわけだ。

演技は決して上手くはないが、その健気さと可憐さにはつい応援せざるをない気持ちにされてしまう。童顔なのでまるで中学生みたいな見た目なのも関係しているかもしれない。

同じBKが4年後に「マッサン」で、日本に来たことがなく日本語も話せなかったシャーロット・ケイト・フォックスをヒロインに抜擢したのは、この時の踏襲ではなかっただろうか。

大阪の舞台となる田中荘は、下町にある賄いつきの下宿屋。まったく昭和な世界だ。私の学生時代の友人が同じような下宿屋に住んでいたのを思い出した。2010年の大阪に、このような下宿屋は存在したのだろうか?

主人公を嫌ったり邪魔者扱いする登場人物はひとりもいない。善人ばかりの世界。それぞれに自分の筋にこだわる強情さを持つばかりにたびたび衝突はするが、後味の悪さは少しもない人情劇だ。リアルさは感じないが、心地よい。

「あまちゃん」との共通項を感じるのは、「あまちゃん」の天野夏も「てっぱん」の田中初音も、18歳まで育てた娘に家出された母親であることだ。意地っ張りな性格も共通している。それがゆえに、夏は帰って来た春子を素直に迎えることができなかった。「てっぱん」では家出した娘の千春は亡くなっているため、その強情さは孫のあかりに向かう。どちらの作品も前半は、両者が雪解けして普通の関係に戻っていく過程が焦点だ。

祖母役は富司純子、前名の藤純子でなら言わずと知れた「 緋牡丹博徒」だが、婆さん女優になってからの活躍がめざましい。

 

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