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「ゴーストライター」をみた

ゴーストライター「ゴーストライター」と言えば、昨年のクラシック音楽家佐村河内守のゴーストライター騒動が記憶に新しいが、このドラマでは小説家とそのゴーストライターの物語がメインだ。

中谷美紀が「文壇の女王」と言われる女流作家遠野リサを、水川あさみが小説家をめざしながらもまだデビューすらしていない川原由樹を演じる。川原由樹はひょんなことから遠野リサのアシスタントに雇われ、やがてその文才を見込まれて、書けなくなっていた遠野のゴーストライターをつとめるようになる。

小説家を主人公にするので、当然出版社もからんでくる。なのだが、そのスタンスがどうもあまり気に入らないのである。

出版界はいま大変な時期にある。書籍そのものの(書籍に限ったことではないが)売り上げも減り、当然小説もあまり売れない。いわば出版界存亡の危機の時代ともいえる。

なのにこのドラマで描かれる売れっ子作家は「いつの時代だよ」と思わせるくらいのバブリーな生活をしている。出版社の編集者や編集長も登場するのだが、特に危機感を感じているようでもない。

川原由樹はやがて自らゴーストライターであることを暴露するのだが、遠野リサと出版社に起こされた名誉毀損の訴訟で負けなかったことにされてしまう。川原に肩入れする編集者が失意の川原に自らの小説を書くようにすすめ、「インターネットのサイトで発表することもできるし、ダウンロード販売という手もあります」と言うのだ。だけど、特に行動も起こさないまま、次の展開に走ってしまう。

私なら、徹底的に今の出版界の問題を調べ上げ、なぜ遠野リサが売れっ子になったのかその戦略をあからさまに描く。それはたとえば、フジテレビ自身がお得意にしているドラマから映画への一連の流れであったりするはずだ。出版社だけでなく、テレビ局や映画会社、さらには雑誌社なども絡んでくるメディアミックスの大企業軍団だ。

それに対抗して、川原由樹側はネットなど新興勢力を味方につけ、YouTuberや電子書籍、さらにはアングラ劇団なんかも巻き込んでいく。みたいな話。

だけど、このドラマの作者はそういう社会的なものに興味がなさそうなんだよな。

この感じ、どこかでみたことあるな、と思ったら、一部の恋愛ドラマに似ている。
たとえば男女が恋愛するためのシチュエーションとしてだけ使われる会社や業界の扱われ方。背景なのだから特に深く切り込むこともなく、おおかたのイメージどおりの現象があればいいのだ。

今回の主人公は女ふたりだけど、師弟であったり、共犯者であったり、ライバルであったりと、2人の関係が変化していく。その様子は恋愛ドラマで男女の関係が変化していくのにも似ている。2人のあいだの心理劇こそこの作者の描きたかったことなので、出版界の現状がどうだとか、アップトゥデートな社会的現象は眼中になかったのね。

 

 

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