コンテンツ評論 テレビ番組評

「ロング・グッドバイ」をみた

一週間前に終了したNHKドラマだが、録画でみた。

このドラマには正直驚いた。

ハードボイルドである。それもハードボイルドの聖典ともいえるレイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウものを日本を舞台に翻案したものだ。

マーロウに相当する探偵役は浅野忠信。役名は「増沢磐二(ますざわばんじ)」となっている。

連続5回だが、NHKだから正味58分の5本。約5時間。映画なら前後編になる長さである。
いや、映像的にはすでに映画だ。
被写界深度の浅い映像に、ディフュージョン系のフィルターワークを効かせた絵づくりは、まさに映画のそれを目指したものだと思われる。

ところでこのドラマを見て思ったことは「本格ハードボイルドを日本を舞台に作ろうとするなら、この時代性が必須なのか」ということだった。

NHK版「長いお別れ」の舞台は、昭和30年代の東京。まだ戦争の爪痕が色濃く残っている時代だ。50年も前だから、ある意味時代劇といってしまってもいい。

探偵マーロウを日本に具現化させようとすると、どうしても現代ではできない。と制作サイドは考えたのではないだろうか。

それどころか、どのような圧力にも屈せず自分の意思を貫く増沢磐二はその時代から見ても「時代遅れの男」として描かれている。
最終回のラスト、滝藤賢一のナレーション(彼は作中で増沢に協力する新聞記者を演じているから、その立場からのモノローグだろう)で、東京オリンピック決定に沸く東京の街をバックとして「来るべき新しい時代にこのような男はもういないだろう。さらば、増沢磐二」と言わせている。

現代にはもはやフィリップ・マーロウは存在し得ず、いわば時代劇に登場する古武士のような男として描いてしまっている。そうかなぁ?
ひとつ前にレビューした「探偵はBarにいる2」が、ハードボイルドの殻だけを使ったコミカル・サスペンスだったことを考えると、複雑な気分になるな。

 

-コンテンツ評論, テレビ番組評
-, , ,