コンテンツ評論 テレビ番組評

#あまちゃん 春子のはるかな望み~その1~

2015/05/13

天野春子、紅白への登場シーン

天野春子、紅白への登場シーン

第64回紅白歌合戦の中に組み込まれた、「あまちゃん特別編」のことから話をはじめよう。

「あまロス」に悩む多くのあまちゃんファンが感涙を浮かべたと聞くが、この特別編(しかもご丁寧に「第157回」というテロップまで入っていた、事実上の続編という体裁だ)は私にとって大変残念なものだった。

■紅白の何が残念だったのか?

ご覧になった方も多いとは思うが、これは紅白が行われているNHKホールと、北三陸市のスナック梨明日を結んだ中継、という体裁で行われた。本編のコーナーはというと、「暦の上ではディセンバー」を歌い終わったアキが、梨明日にいるユイに呼びかけ「こっちに来て一緒に歌うべ」と言うと、ユイは梨明日を駆けだす。そのまま北鉄と空飛ぶ正宗タクシーを乗り継いでNHKホールに到着し、そのまま「潮騒のメモリー」をふたりで歌う。一番を歌い終わったところでアキが「二番は、大好きなおらのママが歌います」と紹介して、そのまま春子があらわれて歌う。さらに舞台したからせり上がった鈴鹿ひろ美が海女カフェでのリサイタルを再現した歌詞で歌い直す、というものだ。(この後、登場人物全員で「地元に帰ろう」も歌われた)

これのどこが気にいらないかというと、春子ではなくてユイが話の中心になっているところ。「あまちゃん」本編の中ではついに東京の土を踏めなかったユイが東京に来て歌う、というのがストーリーなのだ。

最終回を見た人は、ユイはいずれ東京に行ける、と思ったはずだ。なぜなら、ユイの傍らにはアキがいる。アキは、ユイが望みさえすれば東京にユイを連れて行くはず。また、後日談がもしあるなら、それはユイの初東京行きがストーリーの中心になるはず。それが紅白である必要などなかったのだ。むしろ、スピンオフドラマか、続編で描くべき題材だ。

それだけユイが厚遇されているのに、春子はどうだろう。前半に挿入された梨明日中継ではたしかに梨明日にいた春子が、いつの間にかNHKホールにいる。そこに一切の説明はない。

要するに、私が紅白に期待していたのは「これじゃない」ということだ。そもそも、事前に盛り上がった紅白の話題の焦点はなんだったか? 天野春子(小泉今日子)が紅白の舞台に立つか否か、ということではなかったか。

運命のいたずらで歌手デビューできなかった天野春子が、ついに紅白という舞台を得て、歌手としての舞台に立つ。そこが紅白の「あまちゃん特別編」の焦点でなくてどうする。

なぜなら、「あまちゃん」は天野春子の物語であるから。

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