コンテンツ評論 テレビ番組評

「#あまちゃん 春子とユイ」

2013/12/09

YuiHaruko

春子は「アキよりもユイが心配」と言った

キーワードは「分身」。春子とユイもまた、似た者どうしである。

両者とも、アイドルへの志向と東京への憧れを持っていた。
違いは、ユイのほうが「親の理解」を与えられていた、ということだろうか。

だから、春子は早くからヤンキー化してスケバンとして名をはせていたが、ユイが荒れるのは母親が失踪した後になる。

「あまちゃん」において春子は副主人公だが、ユイは脇役である。そのため、春子は自らを語るシーンをいくつも与えられているが、ユイはめったに自分を語らない。

ユイにとって春子は、最初は「アキちゃんのママ」だった。その関係が変化したのは、アキが上京しユイがヤンキー化した後だ。母親が失踪して自暴自棄になったユイが万引きしようとしたところを春子が止め、リアスに連れてきてナポリタンを食べさせて以降である。

そもそも、なぜユイはヤンキー化したのだろうか? ユイがヤンキー化したのは母親が失踪した後のことだ。この時むしろ父親は快方に向かっている。(ユイがヒロシに父親の病状改善を報告する回想シーンがある) 私は、「お母さんみたいになりたくない」という発言が母親を失踪にまで追い詰めたと思っての後悔、がユイを自暴自棄にさせたと考えている。

正月の海女カフェでアキと対峙した時、「お母さん、帰ってこないぞ」と言うアキに対して、ユイはむきになって「帰ってくるよ!」と叫ぶ。このシーンがそう思わせた。東京へ行けなくなったのは、いつか帰ってくるはずの母親を待っていなければならない、という思いのせいだと思っている。

そんなユイを春子は受け止めた。そこからユイは、アキの母親ではなく一人の人間「春子さん」として慕いはじめる。春子は母親がわりになるというよりはむしろ、過去の自分の分身だと思っただろう。

春子はユイのことを「若い頃の自分にそっくり」と思っている。アイドルになりたさに母親を捨てた後悔を、ユイには味わせたくなかったのだろう。だから東京行きを促すのではなく、母親を待つ「場」を与えたのだと思う。ユイはその後、春子の目の届くスナック梨明日で働きはじめる。

その後、春子は上京するが、ユイは夏ばっぱや海女クラブのメンバーと一緒に梨明日で働きながら、故郷・北三陸の良さにも目覚めていき、一時は海女も経験することになる。(だったはずなのだが、東京編では物語はアキを追いかけており、ユイについてはたまに現況が挿入されるだけで、あまりにも描写が少ない。海女をやるきっかけとか、ヤンキーの格好をやめたきっかけなど、まったく描かれていない)

ひとつ気になることがある。夏の看病のために北三陸に帰った春子は、東京に戻るときなぜユイを伴わなかったのだろう? この時春子は芸能事務所の社長であり、ユイの夢をかなえてやることのできる立場にあったはずだ。またユイも、母親が戻ってから時間が経過し、落ち着いて自分の将来を考える機会もあったはずである。想像すれば、ユイはすでに東京への興味を失っていた、ということだろうか。

もしユイが望んでいたなら、春子は自分の分身ともいえるユイのアイドルデビューをバックアップし、デビューできなかった過去の自分を鎮魂することもできたはずだ、と思うのだ。

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