コンテンツ評論 テレビ番組評

「#あまちゃん」をめぐる5人の女

2013/09/29

(左から)天野春子、アキ、夏

(左から)天野春子、アキ、夏

申し訳ないですが、当分「あまちゃん」についてのポストが続きます。
最終回を迎え、ようやく作品じたいについて言及できるようになったので…。

どうやってストーリーを分析しようかと考えていたが、とりあえず「あまちゃん」を構成する5人の登場人物をとりあげて、それぞれの関係を書き出してみることにする。

偶然だが、5人全員が女性である。

「あまちゃん」は、故郷についての物語、と以前に書いたが、同時にアイドルについての物語であることも明確なので、それぞれのキャラクターの故郷についてのポジションと、アイドルをめぐるついてのポジションをまず書くことにする。

(1) 天野夏 (故郷に根付く女)
夏ばっぱは、故郷そのものを象徴する登場人物だ。北三陸に暮らし、そのエリアから出たことがない。
海女という仕事上、海を密接に感じていて、その恵みと恐ろしさを同時に知っている。
物語終盤でははじめて東京を訪れるとともに、若き頃の夏の姿が明かされ、北三陸でのアイドル的存在だったことが語られる。

(2) 天野春子 (故郷を憎む女)
春子は18歳で家出をして、故郷を捨てる。その背景には、アイドルになりたいという夢があったと同時に、それを阻む故郷(そして夏)への憎しみがあった。物語は春子が24年ぶりに帰郷して、故郷(そして夏)と向き合いなおすところから始まっている。
東京に出た春子は、しかしアイドルになることはできなかった。その事情の解き明かしこそが、中盤からの物語を牽引していく。

(3) 天野アキ (故郷を持たない女)
アキは東京出身だが、東京を地元として親しんだことがない。そのアキが北三陸に来て、そこを故郷として自分の中に取り込んでいく過程が、物語序盤のストーリーになる。海女になることで、アキは北三陸に受け入れられ、そこを自分の故郷として感じるようになる。と同時に地元アイドルとしての人気を得る。やがてアイドルになりたいという志向を持って東京に戻り、紆余曲折の末に実際にアイドルとしての活動を始動する。しかし、震災を機に故郷北三陸へ戻っていく。

(4)足立ユイ (故郷に閉じ込められた女)
アキと反対にユイは北三陸に生まれ、東京に強い憧れを持つ。東京についての知識は豊富だが、実際に行ったことはない。アイドルになりたいという強い志向を持っており、地元アイドルとしての人気を得て、それを足がかりに利用して、上京してアイドルになろうとするが、何度かの機会はすべて運命に潰されていく。

(5) 鈴鹿ひろ美 (故郷を訪れる女)
鈴鹿は、東京を、そして芸能界を象徴する人物である。出身は明かされていないが、いずれにせよ北三陸ではない。アイドルとしてデビューし、今でも女優として人気と実力を誇っている。物語終盤、震災を契機として北三陸を訪れることになる。

「あまちゃん」の主要な物語は、すべてこの5人の女の関係性でもって描くことができると思う。
「あまちゃん」では、単純な家族再生といった手法をとらず、すべて個人対個人の関係としてひとつひとつのプロットが丁寧に描かれている。そこで、今後の記事ではこの5人の1対1の関係を、ひとつひとつ物語に即して解析していくことにしたい。

 

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