コンテンツの育て方 コンテンツ文化論

「あまちゃん」にみる地方搾取の構図

主人公アキは地元アイドル「潮騒のメモリーズ」として人気を得て、東京の芸能事務所にスカウトされる

主人公アキは岩手で「潮騒のメモリーズ」として人気を得て、東京の芸能事務所にスカウトされる

朝ドラ「あまちゃん」は、昨日から東京編に突入した。

岩手県北三陸市でご当地アイドル「潮騒のメモリーズ」として人気を得た主人公アキは、東京の芸能事務所にスカウトされ、ご当地アイドルを集めたアイドルユニットGMT47のメンバーになるべく上京する。

ドラマ中ではGMT47は「地方から日本を元気にするプロジェクト」であると関係者によって語られるが、実質的にはすでに人気のグループ、アメ横女学園の二軍扱いでメンバーも揃わず、アキは甘くない現実を思い知らされている展開だ。

ドラマとは別に、このGMT47プロジェクトについて考えてみたいと思う。

まず「地方から日本を元気にする」というコンセプトだが、これは眉唾ものだ。
実質、各地ですでにある程度の人気を得ているご当地アイドルグループから、センターを担当したりリーダーであったりという中心メンバーを1人ずつ引き抜いている。(デュオの「潮騒のメモリーズ」のみ2人ともスカウトされたが、ユイの父親が病気になり、アキのみ上京した。しかし実は、ユイのほうがメイン扱いだったというオチ)

これでは、ご当地に残されたメンバーや関係者は納得がいかないだろう。新規メンバーを加えて、新たに立て直せる場合はよいが、そうでなければ壊滅だ。細々と培ってきた人気のエッセンスを持って行かれるのだから。

GMT47の本質は「地方の元気を東京に移す」ということだろう。その裏には「地方でいくら頑張っても知れている。東京に移してあげた方が、彼ら自身も嬉しいはず」という上から目線がある。

GMT47の発案者であり、プロデューサーである太巻こと荒巻太一が東京出身者と設定されているのを見て、ピンときた。一部の東京出身者には、「東京=中央≒日本」であり、地方は視野外にある人物がいるものである。こうした人の話を聞いていると、時に地方は見えていないのではないか、という感じで「日本」という単語を使ってくる。

連想するものに、お笑い芸人の世界がある。各地方からお笑い芸人を志す若者が出てくるが、直接東京に活動の舞台を求める者の他に、まず地元で活動する者がいる。最近は各地方に芸能事務所もブランチをかまえていて、「ご当地芸人」の発掘が盛んだ。
しかし、そうやって地方で活躍する芸人たちも、最終的にめざすところは「東京進出」である場合がほとんどだ。

結局、メディアが東京に集中し、東京でないと大きな活動ができないのが日本の現状だからだろう。

GMT47に話を戻す。
作者である宮藤官九郎は、このドラマの中で必ずしもこのプロジェクトを肯定的に描こうとしてはいないと思われる。
アイドル出世物語のように、辛いことも経験しながら主人公がのしあがり、最終的にGMT47のセンターポジションを獲得して全国区の人気を得る、ということが最終の狙いではないと思う。

それが、地方と東京のバランスをテーマとするこのドラマの特色である。
そうでなければ前半3ヶ月を費やした北三陸での物語は単なるプロローグになってしまう。

とりあえずは、悪しき東京の象徴であり地方搾取のプロジェクトであるGMT47を設定し、その中に呑み込まれた主人公アキをはじめとするご当地アイドルたちが、その中でどう闘っていくか、という舞台にしたのだろう。

個人的な予想としては、呑まれた鯨の腹を破って出てくるように、アキは最終的にはGMT47プロジェクトそのものをぶっ壊すと思う。

アキの志は「全国にむけて、故郷北三陸が一番だというメッセージを発信したい」と語られた。
おそらく、その志はGMT47プロジェクトの中で実現することはないだろう。
だから、アキはGMT47というシステムごと変えてしまうしまうはずだ、と思う。

そのためには、このシステムの主導者である太巻との対決は避けられないだろう。
最後には、ラスボス太巻との対決で、東京編が締めくくられるのではないか、とひそかに思っている。

作者としては、東京を克服する地方のパワーを描きたいはずだから。

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