テレビ番組評

さらにもうひとつの「ラスト・フレンズ」

2010/12/11

全話見て、総集編+αの「もうひとつのラスト・フレンズ」までいちおう見たのだが…。
どうも釈然としないものが 残っている。
(ドラマの説明まではしたくないので、フジテレビ公式サイトWikipediaを見てくれ)

それは、DVやストーカー被害といったものに対して、登場人物の対応がまったく間違っていること。
もちろん、ドラマとしては悲劇を描きたいのであって、そのためには社会的に正しい対応をとっていてはストーリーが成立しないということもあるだろう。
しかし、だからといって公的な支援制度や法律を無視してストーリーが進んでは、どうもおかしい。
いつの時代が舞台なんだ、ということになってしまう。

「もうひとつのラスト・フレンズ」と銘打った特別編がそのあたりの回答になっているのかと期待したが、単に後日談を加えただけの 総集編でがっかりしてしまった。

そこで「さらにもうひとつのラスト・フレンズ」を考えてみた。

美知留、瑠可、タケルが瑠美とともにシェアハウスで暮らし始めてから、2~3年後。
ミラノから帰国してきた小倉(オグリン)・エリ夫妻をまじえて、 楽しいひとときを過ごすのは放送された後日談と同じ。
それをプロローグとして、本編はミラノに戻る機中の小倉夫妻の会話ではじまる。

小倉「あの、自殺した美知留ちゃんの元彼…」
エリ「及川宗佑?」
小倉「そう…。彼を結局死に追いやったのは、僕たちの対応のせいもあるんじゃないか、とずっと気になってたんだ」
エリ「どうして? 悪かったのは彼自身じゃない」
小倉「そうなんだけど。僕たちが違った対応をしていたら、彼も死を選ばないですんだかもしれないと思うんだよ」

そして、ドラマのフラッシュバックがはじまる。

かいつまんで、美知留と宗佑の出会い、同棲までのいきさつ。美知留と瑠可との再会。
そして宗佑によるDVシーンが描かれる。
小倉「美知瑠ちゃんがDVの被害に遭っていることを知ったとき、僕たちは、シェアハウスの仲間たちの中だけで抱え込んでしまった」
エリ「それがいけなかったというの?」
小倉「そうだ。DVはいまや社会的な問題で、公的な支援制度もあるんだ」

このドラマにおける小倉の役回りについて考えてみる。
彼はシェアハウスの住人の中では最年長で、唯一の会社員でもある。個人的には離婚問題を抱え込んでおり、法律的な問題にも関心を持たざるをえない立場だ。
本来は、この問題に対して常識的な視点を持ち込むために作られたキャラクタではなかったのか、と想像する。でないと、彼の存在の意味がよくわからない。
(彼はオープニングシーンからも削られてしまっており、主要登場人物の中でも一番影の薄い人物になってしまっている)
しかしながら、ストーリーを練り込んでいくうちに、結局「常識的な視点」「社会的な対応」といったものが削られてしまい、それとともに彼の発言機会が失われてしまったのではなかろうか。

問題に対する正しい対応、ということを考えてみる。
瑠可はみずからの性別違和感症候群に対して専門医に相談している。これは正しい 対応だといえるだろう。
いっぽう美知留のDV被害については、誰も公的、法律的な対応を示唆していない。
当事者の美知留をはじめ、瑠可、タケル、エリなどはあまり新聞なども読んでそうではないし、公的な支援や法律について知らないかもしれない。
しかし小倉からそうした視点が出てこないというのは、その控えめな性格はともかくとしても、不自然だ。
このストーリーを成立させるために圧殺したというのであれば、「もうひとつの…」と題した特別編でならば表現できるのではないか?
本編終了直後に放送する特別編で、そうした「社会的に正しい対応」を示すというのも、社会の公器たるテレビ局の役割ではないのか?
(公式サイトにはそういうページがあるが、言い訳的なものにすぎない。テレビ局ならば番組で示すべきだろう)

「さらにもうひとつのラスト・フレンズ」続ける。
ドラマの回想と併行して、公的なDVに対する相談窓口の紹介や、各種の支援制度について紹介する。
もし美知留がこの時点で、こうしたところに相談していれば、ということを小倉は言う。

エリ「そうしていたら、よかったのかもしれないね。でも彼はあきらめなかったと思う」
小倉「だけど、彼が少なくともシェアハウスの仲間のことだけを敵だと思いこむようなことはなかったんじゃないかな」

ドラマの回想シーンは進んで、美知留はシェアハウスに暮らすようになる。
宗佑はそれをかぎつけて執拗につきまといはじめる。
小倉「この時点では、彼の行為はストーカー規制法に触れるんじゃないか?」
ストーカー規制法の存在や、どういった行為がその対象になるか、が説明される。
もし美知留が警察などに相談をしていたら、宗佑に対してどのような警告が発せられたか、さらに行為を続けるとどのような罰則が課せされるか。

エリ「それでも彼はつきまといをやめなかったと思うよ。美知留ちゃんは彼を罪にはしたくなかったんじゃないかな?」
小倉「けど、逮捕されたら、彼はまだ生きていたと思うよ」

ドラマの回想シーンはさらに進む。タケルが自分と美知留との関係を邪魔していると思いこんだ宗佑はタケルに暴行をはたらく。
小倉「少なくともここに至っては、彼は傷害事件を起こしているんだ。ちゃんと警察に被害届を出すべきだった」
エリ「だけど、目撃者もいないし、タケルの証言だけでは彼を有罪にはできなかったかもしれない」
小倉「それでもいいんだ。警察の取り調べを受ける中で、彼は自分の行為がどんなに卑劣だったか、気づく機会が与えられただろうから」

結局のところ私には、美知留へのDV被害がエスカレートしていったのは、美知留とシェアハウスの仲間たちが「プライベート」の中でそれを処理しようとしたから、としか見えない。 これを「ハブリック」な場に持ちだしていれば、宗佑も単純に瑠可はじめシェアハウスの住人たちだけを敵だと思いこんで、極端な行為に出ることはなかったのだろうと思う。

まあそれでは「ラスト・フレンズ」の物語が成立しない、というのであれば、特別編というかたちを借りてでもそういう視点から物語に切り込んでみるというのもよかったのではないか、と思う。

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