小説・エッセイ評

篠田節子「アクアリウム」を読んだ

2010/12/11

篠田節子は注目すべき作家だと思う。
それは、ひとつには彼女がおよそ既存のジャンルにとらわれないこと。
むしろ「ジャンルの篠田流再構築」をさえ意識しているようにみえる。

アクアリウム (新潮文庫)

奥多摩山中の地底湖に未知の生物が棲息している。
偶然の出来事からその生物とかかわるようになった青年を主人公とした物語が本作だ。
青年は未知の生物とふれあい、「イクティ」と名付けた生物との交流を通して、それを愛するようになる。
いっぽう、林道工事によって、イクティの棲息環境は壊滅的なダメージを被ろうとしていた。
青年は、イクティの存在を伏せたまま、林道工事反対運動の渦中へ身を投じていく。

冒頭に書いたような意味で言えば、作者にとってこの物語はSFではないのだろう。
だが、私にはスタニスワフ・レムソラリスの陽のもとに」との類似性を感じる。

惑星ソラリスの「海」は、イクティのようにわかりやすい未知生物ではないが、同じように人間に対してある種のイメージを見せるという性質を持っている。そして、男性である主人公に対して特定の女性のイメージを見せることがストーリーの鍵になっている。

作者がそれを意識していたかどうかはわからないが。

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