映画・DVD評(邦画)

「ALWAYS~三丁目の夕日」のシナリオを読む(3)

2011/01/05

茶川と淳之介の関係は、私にはどうにも父親と息子にはみえない。
どっちかというと師弟関係、あるいは共作者の関係ではないかと見える。
そこが明確に描かれておらず、無理にヒロミを巻き込んで擬似家族に仕立ててしまっているあたりが「薄い」イメージの元凶かな、と思われる。

後半「少年冒険団」執筆にあたって、茶川が淳之介の発想を頼るような場面があるとはっきりしただろう。それなら、万年筆を贈る意味もわかるというものだ。

淳之介が父親に引き取られるエピソードも、あまりに唐突に父親が登場し(その前のエピソードでは母親を捜しに行っているのだし)すぐに引き取られていってしまう。

淳之介にしてみたら、顔も知らなかった父親と茶川だったら、父親に惹かれる要素は少ないはずだ。もう最初から「コレは帰ってくるな」とわかってしまうのだ。

今度は茶川竜之介と石崎ヒロミの関係を追ってみる。

オープニング当初、ヒロミが夕日町三丁目に居酒屋「やまふじ」を開店してわずか1週間であることが、淳之介を連れてきた「フランス座」の支配人との会話で明らかになっている。

(1)「やまふじ」に茶川が客として来店。自分が作家であり、子ども向け小説を書いていることを誇大に語る。ヒロミは茶川に淳之介を預かってほしいと頼み、茶川は酒の勢いで承諾して淳之介を連れ帰る。

まだ開店当初ということもあり、特に常連客もいなかったので、預かってくれれば誰でもよかったのだろう。この時点でヒロミは茶川を金持ちのボンボンと誤解していることが、茶川が去った後の客との会話でわかる。

(2)翌日夕方、ヒロミが茶川の家に淳之介の様子を見に来て、ライスカレーを作る。(この後、夕食をともにしているが「やまふじ」は定休日だったのだろうか)

この時点では、ヒロミは淳之介を押し付けたことに対する気遣いから茶川の家を訪れたにすぎないだろう。(たぶん、気のいい女なのだ)

余談だが、日本初の固形カレールウ「ハウス印度カレー」が発売されたのは昭和35年である。ヒロミはカレー粉でライスカレーを作ったものと思われる。

ここまでが春の展開。夏になると…、

(3)茶川の駄菓子屋でヒロミが菓子を子どもたちに売っている。

ヒロミ「適当に売っちゃったわよ」
  座卓に原稿書きかけのまま寝ころんでいる茶川。
茶川「…俺はダメだ。もう才能が枯れ果てた。何も出てこない…死ぬしかない」
  茶川、哀願するようにヒロミを見る。
ヒロミ「…帰るね」

のやりとりで、ヒロミが何度か訪れてはいるが、店を手伝うほどの関係ではないことがわかる。

夏はこれくらい。秋になると…

(4)茶川とヒロミが淳之介の母親の消息を話している。淳之介は押入れの中でそれを聞く。
(5)淳之介と一平(淳之介の母に会いに行った)を、鈴木夫妻と茶川、ヒロミが捜している。帰ってきた淳之介を茶川が平手打ちする。

この後、寝ている淳之介のそばでこういうやりとりがある。

ヒロミ「…ホントのお父さんみたいだったよ」
茶川「…よせよ」
(略)
ヒロミ、冗談めかして言う。
ヒロミ「私、淳之介のお母さんになってあげよっかなー」
茶川「…?」
ヒロミ「ねえセンセ、一緒になろうか」

擬似家族のイメージを提示したのはヒロミである。
この後、ヒロミは冗談とごまかしてしまう。

ここで茶川はあきらかにこれをヒロミからの愛の告白と受けとる。
昭和30年代という時代を考えれば、まあ当然とは思える。

茶川は銀座に指輪を捜しに行き、編集部に原稿料前借りを申し込む。断られたのか足りなかったのか、則文にまで借金をする。だが、実際に買ったのは、淳之介へのプレゼントである万年筆。

(6)淳之介にサンタの演出をして万年筆を贈った後、茶川はヒロミにプロポーズし、指輪の箱を差し出す。しかし、箱は空。

茶川「…スマン…この通りだ。…金が…箱しか買えなかった。あ、でもすぐ…この中身はすぐ…。俺の原稿がもう少し高く売れて」
  ヒロミ、泣きそうになりながら微笑む
  つっけんどんに左手を出す。
ヒロミ「つけて」
茶川「…?」
ヒロミ「その…いつか買ってくれる指輪つけてよ」

まあ、調達できた金が少なかったのだろうけど、茶川が選んだのはヒロミへの婚約指輪ではなく、淳之介へのクリスマスプレゼントだった

この後、ヒロミは店を畳んで、夕日町三丁目から姿を消す。
茶川は、不動産屋からヒロミに父親の入院費用の借金があったことを聞いている。

なんだか、書いていて非常に「薄い」と感じる。
実際、茶川と淳之介の関係にくらべてエピソードも少ない。

たくさんのエピソードを同時並行で進行させるタイプの作品だから、どうしても各エピソードをじっくり描きこむことはできないのだが、茶川を中心とするストーリーは淳之介との関係がメインだといえそうだ。
ヒロミとの関係は、ちょっとロマンティックな雰囲気をかもし出す、くらいの感じだろうか。実際、他に恋愛模様のない作品なので、これくらいの色づけは必要だったのだろう。

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