映画・DVD評(邦画)

「ALWAYS~三丁目の夕日」のシナリオを読む(2)

2011/01/05

「ALWAYS~三丁目の夕日」のもうひとつの主要な柱となるのは、茶川竜之介と古行淳之介、および石崎ヒロミからなる"擬似家族"が形成されていくストーリーだ。

淳之介が茶川の家にやってきたいきさつは、こうである。
(1)ヒロミが以前踊り子として働いていた劇場の支配人が淳之介をヒロミのところに連れてくる。淳之介の母親は、かつてヒロミと友達だった。
(2)ヒロミは淳之介を厄介払いするために、自分に好意を寄せる茶川にしばらく預かってくれと押し付ける。茶川は酒の勢いで快諾してしまう。
(3)翌日、茶川はそのことを思い出して、ヒロミに淳之介を返すため連れて行くが、ヒロミは不在。

茶川「お前と俺とは、縁もゆかりもない、アカの他人なんだよ(指さして)じゃヒロミさんの所に戻れ」。

この言葉はキーワードである。
終盤まで何回か繰り返されるが、そのたびに意味が少しずつ変化していく。とりあえずここでは、文字通り「アカの他人なんだから、俺を頼るな」という意味である。

(4)淳之介は茶川の家に居つき、茶川が自分の愛読していた小説「少年冒険団」の作者であることを知ってからは、茶川を慕うようになる。その後ヒロミが様子を見に来た時には、茶川も淳之介が自分のファンであることを知り、なんとなく許す気分になっている。

ここまでが春のパートの展開である。この段階では、茶川はまだ淳之介を自分のファンとしてしか見ていない。作家として、ファンがいたということが嬉しかったのだろう。
(近所の子どもも「少年冒険団」を読んでいたはずなのだが、茶川が作者だと知らなかったのだろうか。それとも、ファンらしい言動をとらなかったのだろうか。少なくとも淳之介が茶川にとっては、はじめてのファンだったと思われる)

続いては夏の展開。
(5)淳之介は茶川の影響を受けて、自分なりの「少年冒険団」を書き始める。茶川は執筆の発想が行き詰まり、淳之介が書き溜めておいた原稿を発見して、それを自分の連載に使ってしまう。
(6)茶川は盗作した小説が掲載された雑誌を隠すが、淳之介は学校で友達からそれを見せてもらう。茶川は淳之介に後ろめたさを感じる。淳之介は逆に自分が嬉しく感じたことを茶川に話す。

この段階では、茶川と淳之介の関係は、どっちかというと師匠と弟子のような感じである。茶川はここで淳之介にこう言う。

茶川「いいか、俺はアカの他人のお前を養っているんだからな。お前のアイデアなんて、全部俺のもんなんだよ」

この時点でこの言葉は後ろめたさの裏返しであり、茶川が淳之介を認めた表明だと考えられる。

秋の展開では、淳之介が鈴木家の一平とともに母親を探しに行く。
(7)ヒロミが茶川に淳之介の母親の目撃談を話す。淳之介はたまたま押入れの中に隠れていて、それを聞いてしまう。
(8)淳之介は一平にそれを話し、一平に促されて母親を探しに行く。母親のいるはずの店まで辿りつくが、母親には会えずに帰る。
(9)その頃夕日町三丁目では淳之介と一平が行方不明になったことで大騒ぎになっている。茶川は帰ってきた淳之介を平手打ちして怒鳴る。

茶川「心配させんなよ」
淳之介を抱きしめる茶川。たまりかねたように泣き始める淳之介。
茶川「お前とは縁もゆかりもないんだからな。アカの他人なんだからな」

ここでは、この台詞は茶川自身の淳之介に対する心配と、いつか淳之介が離れていくのではないかという恐れを示している。

ここから茶川とヒロミが擬似家族のイメージを口にしはじめ、それが茶川のヒロミへのプロポーズにつながっていくのだが、ここでは茶川と淳之介の関係だけを追おう。

冬の展開では、クリスマスプレゼントが淳之介が父親に引き取られるストーリーにからんでいく。

(10)茶川がヒロミ、宅間医師の協力を得て、サンタクロースを演出し、淳之介にクリスマスプレゼントの万年筆を渡す。淳之介はサンタが実在したと信じてしまう。
(11)淳之介の父、川渕があらわれ、淳之介を引き取りたいことを茶川に話す。淳之介は引き取られて行くが、その際プレゼントの万年筆を見咎め、茶川に返す。
(12)茶川はいったん帰宅するが、淳之介の書いたプレゼントへのお礼の手紙を読んで、川渕の車を追う。大通りに出たところで帰ってきた淳之介と出会う。

茶川「行けって言ってんだろ!お金持ちの家なんだぞ。何でも買ってもらえるんだぞ」
(略)
  茶川、思わず淳之介を抱きしめる。
茶川「常識で考えろよ。お前とは縁もゆかりもないんだぞ。アカの他人なんだぞ」

ここではこの台詞は、言葉とは裏腹に、茶川にとって淳之介が離れがたい存在になっていることを表現している。

さて、追いかけるだけで長くなってしまった。考察は次回に回そう。
次回は、茶川とヒロミの関係も一緒に考えたい。

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