コンテンツの育て方

「草の根ビデオ広告」に対する期待と課題

2010/12/28

CNET JAPANの記事『「草の根ビデオ広告」に便乗する大企業の期待と課題』は、たいへん考えさせられるものだった。

欧米で、企業の依頼を受けたクリエーターではない人たちが作ったビデオ広告が注目を集めており、クライアント企業や広告会社もそれに便乗する動きを見せている、という記事だ。

 ブログがバンパーステッカーのようにありふれたものになり、またYouTubeによってバイラルビデオが全盛期のNapsterを使ったダウンロードのような盛り上がりを見せているなかで、アイデアをさがすマーケティング担当者が一般の人々に目を向けているのも不思議なことではない。批判広告一色といった市場のなかで、企業各社は次々とこのバイラル戦略に便乗し、なんとか消費者の心をつかもうとしている。

 一方、デジタルビデオカメラの低価格化やコンピュータの高性能化、使いやすいビデオ編集ソフトの登場、そしてブロードバンド回線の急激な普及などにより、ノートPCとわずかな想像力を持ち合わせる人間ならだれでも、これまで手の届かなかった方法で、容易に自分を表現できるようになっている。

例として、アメリカの18歳の青年が自分の技術デモとして作ったソニーの広告があげられている。
(余談だが、たしかにこのビデオはいい出来だが、文字の動きにAfter Effectsのテキストアニメーションのプリセットを使っているようだ。どうでもいいことだけど)

考えさせられた、というのは一瞬、この動きがいいことかどうか、はかりかねたからだ。

これは、これまでになかったほど映像クリエーターと一般人の間の距離が縮まっている事実を、目の当たりにさせる記事である。個人として、すばらしいクリエーティブを発揮する人々が増えている。それは、間違いなくいいことだ。

だが一方では、プロの映像クリエーターが立場を失う危機に瀕していることをも示している。もしくは、プロフェッショナルという地盤の崩壊である。

映像業界人はこれまで、何か一般人には触れることのできない、特殊なものを扱っている幻想に浸ってきた。大きな予算と、特殊な技能を持たないと満足なものは作れない、そういう幻想だ。いまだにそう考えている奴らもいる。

だが、実際にはもうそういう時代はだいぶ前に終わりを告げ、一般人がどんどん映像クリエーティブの世界に入り込んできている。彼らは、予算も、技能も持たないかもしれないが、少なくともその一部はそのかわりになる情熱と、かけがえのないアイデアを持っている。

問題は、業界にそういう人たちを正式に受け入れる仕組みがないことだろう。彼らの持つ能力を生かして使うすべがまだ確立されていない。

そこでどういうことになるかというと、映像での商売の仕方を知らない素人クリエーターは自分たちの能力を安く売り始め、すり切れていく。一方、業界という地盤にあぐらをかく業界人は、何ら危機感を持たずくだらない作品を作り続けていく。これは、決していい環境を生む状況ではない。

少なくとも業界には、能力をカネに変えるノウハウや、作品を世に出すプロセスが存在する。それらを素人クリエーターに活用させて、彼らをプロへと育てていく仕組みが必要だろう。

でないと、双方にとって長い目でみていい時代は訪れないと思う。

-コンテンツの育て方
-